4月12日、午前1時。春とはいえ、夜中なので寒い。
「寒っ。」
パジャマ姿で僕は向かった。しょうがない。こっそり出てきたのだ。
「来ないかな…」
西中の武道館近くの大木が、怪しげにざわめいた。すると、
「雨か…。」
雨が降ってきた。
「雨の音しか聞こえない…。」
するとようやく、
「やべっ。雨降ってきたな。」
龍吾が来た。
雨がどんどん本降りになる。
「で…何だよ。呼び出したりして。」
龍吾は…実は話したいことがあったが、自分の気持ちを抑えた。
「…うん。この前はありがとう。」
「あーっ。オレこう見えてもケンカ強いんだぞ。まっ、一番ではないけどな。」
「ある程度ってこと。」「あーそうだな。」
雨は降り続く。
「龍吾ごめんね。僕のお母さんああいう人だから。」
「……。」
そのことにはさすがの龍吾も黙る。
「だから、家族…。龍吾みたいな家族が羨ましかった。」
「ああ…。」
「どうした?何かあったの?」
ヤバい。オレが言おうとしていることを悟られた。
こういう会話中なのに…どうしよう…
オレは、はっきり本当のことを言おう…。
「みーくん。」
「?」
僕は首を傾げる。
「オレ…オレはな…。」「…どうしたの?」
「オレは…。」
「何。何なの?」
「オレの家族は本当の家族じゃない。」
「えっ…」
驚きを隠せずにはいられなかった。まさか、龍吾…。
「オレは…本当の母親に…捨てられた。」
「うそ?」
「…そして、今の母ちゃんに、オレと姉ちゃんは養子として迎えられた。それが…5年生のとき。」
「5年生…。」
「オレはその前までは、東京にある施設にいた」「その施設って…捨てられた子ばっかり…。」
龍吾の…落ち込んでいる顔…初めて見た。