ほんの小さな私事(36)

稲村コウ  2009-07-04投稿
閲覧数[353] 良い投票[0] 悪い投票[0]

ティーセットは、私が東京から持ってきたものがあるので、いつもそれで紅茶を淹れているのだが、多分、藤沢さんは、それに見慣れていないと思い、結局の所、私もキッチンに行くことにした。
私がティーサーバーと茶葉の入った缶を戸棚から取り出すと、案の定、藤沢さんは、驚いた顔を見せて言った。
「こんなの初めて見るよ。はぁ〜…なんだかこ洒落てるねぇ。」
私はサーバーに茶葉を入れながら「藤沢さんもいかがですか?」と言ったが、藤沢さんは、「私はそういうのはあんまりねぇ。番茶のが性にあってるから、遠慮しとくよ。」といった。
まあ、人の好みというものもあるので、無理に押し付けるのも何だし、取り敢えず、自分の分のティーカップだけを用意し、トレーにサーバーと共に乗せたあと、藤沢さんに言った。
「私はこれを部屋に持っていって飲みます。これぐらいなら私で後片付けはしますので、お構い無く。」
「わかったよ。それじゃあ、私は、住職が戻るまでいるから、何かあればいっておくれ。あと、勉強するのもいいけど、根詰めすぎない程度にしなよ?」
藤沢さんは、ある意味、心配性なのかもしれない。でも、親でない藤沢さんが、こう心配してくれるのは、とても嬉しい事だ。
「はい、それについては大丈夫です。ちゃんとペース配分考えながらやっていますので。では、私、部屋に戻りますね。」
私は軽く一礼したあと、ティーセットの乗ったトレーを持って、部屋に戻った。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 稲村コウ 」さんの小説

もっと見る

学園物の新着小説

もっと見る

[PR]
アプリDLで稼ぐ!
“Point Income”


▲ページトップ