営業の帰りある寺に立ち寄った。
国宝に指定された5メートルはあろうかという座禅を組んだ木像がある。
本堂の奥のガラス張りの広い敷地に安置されていて、観覧しやすくなっている。
全体的に黒光りしてなかなか存在感がある。
寺への入堂、参詣は無料で自由。
お参りをして展示してある資料を見ていると背後から声がした。
「お茶をいれてあげるから飲んでいきなさい。」
「あ、 はい。」
渡り廊下を通り書斎兼リビングらしき部屋へ案内された。
「今不景気じゃから、大変じゃのう。」
「そうですね。」
「どっこも大変じゃ言うとるがぁ。」
「ええ。」
入れてもらったお茶をすすりながら書棚に並んだ本の背表紙のタイトルを見るとはなしに見ていると
「若い頃はクラブにもよう飲みにいった。いまでも誘いがあらぁ。。」
その店のママさんは雇われで、月に数十万の給料をもらっているそうだ。
それでは全然足りないということらしい。
マンションの家賃がいくらで、毎日の髪の毛のセット料がいくら、それから・・・・・・・・・
「身の丈におうた生活をせにゃいかんよのう。」
「・・・ですねぇ。」
「まあ、どっこも大変なんじやて。毎週一回は電話がかかってきよる。飲みにけえ言うてのう。」
住職はその夜も出掛けて行くらしかった。
人助けはお釈迦さまもお褒めになられるだろう。
御仏にすがるママさんにもお慈悲をお与えになるだろう。