「アノ…明日香さんは、このCDがお好きって言いましたが、ご自分の物なんですか?」
ミユキが小声で尋ねた。
「はい。ジャニスが好きで、自分で買いました」
明日香はにっこり笑って答えた。
「そうなんだ…このCD、実はアタシも好きなんですよ。特に1枚目の『サマータイム』が大好きで。こんなビーチにも良く似合いますよね。ねぇ明日香さん、このアルバムの1枚目を聞かせてもらっていい?」
ミユキがそう言うと、明日香は少し間を置いてから答えた。
「残念ながら、1枚目のCDは自宅に置き忘れてしまって…私も気に入っているんですけど」
「そうですか…」
ミユキは、やや不服そうな顔を見せた。
「では、ごゆっくりどうぞ」
明日香は微笑みながら、店の奥に戻った。
「あやしいな…同じタイトルの2枚組CDが、1枚目と2枚目それぞれバラバラになってる偶然って…そんなに有るかしら?」
ミユキは明日香を疑っていた。
「俺は明日香ちゃんの気持ち分かるな。2枚組なら、なかなか一度には聞けないから別々の場所で聞きたくなるもんさ。きっと明日香ちゃんも、好きな男の影響でジャニスを好きになったんだろうなぁ」
マモルのその一言で、ミユキの表情はますますブルーになった。