「お母さんが…倒れた?」
信じられなかった。
「とにかく、早く来てよ!」
「おう!」
「救急車…早く来てぇ…。」
急に変わり果てた母ちゃんの姿。その光景が今…現実になっている。
母ちゃんは、オレ達に本当に良くしてくれた。そう思うと、自然と涙が出た。
「母ちゃん!今救急車くるからな!」
するとかすかに聞こえる声で、
「心配しないでええんよ。」
「お母さん!」
姉ちゃんはもう泣き崩れていた。
「この家族に…お父さんがいればね…。」
「えっ…母ちゃん?」
「お父さんがいれば、もっと…もっと楽しい…家族だったのに…。」
「いーんだよ!オレらは…これが1番の家族だと思ってる。誇れる家族だと思ってる!」
「ありがとう…」
背中を必死にさする龍吾だが、母ちゃんの顔色は悪くなる一方だった。
間もなく、母ちゃんは救急車で運ばれた。
「まさか…」
うつむく龍吾。
「龍吾。そんなこと言わない。お母さんは絶対助かる。」
「うん…だな。」
「明日、学校終わったら、きぬ総合病院まで…お見舞いに行こうね。」
「…あぁ」
部屋に戻った龍吾は、携帯を開いた。
みーくんに言うべきか。でも、すぐ閉じた。
「心配かけたくないもんな…。」
龍吾はメールを送らなかった。
オレなりに考えた。
みーくんの気持ち…
だけど…オレは全然分かってなかった。