pain10

ミア  2009-07-06投稿
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フェンリの指差すほうを見ると、道が消えているのが見えた。

「あ−…まずいな」

私は呟いた。

崖の一部が崩落し、吊橋が落ちてしまっている。

「どうする?アッシェン」

フェンリは私の顔を覗き込んだ。

「仕方ない。別のルートを行こう。来た道を戻って、森の外を回り、ピオン山を上るしかない」

「ピオン山って…クフェンシスの棲みかじゃないか!」

フェンリは叫んだ。クフェンシスとは、大型の獣で、人を襲う。

「他に道がない」

「海路は?」

「チルビノ付近は極端に遠浅で、座礁しやすい上に、海流が早い。たえられるような船を探す時間はないし、行けたとしても、チルビノの港は検問が厳しい。忘れるな、私たちはテロリストなんだ」

「わかったよ…じゃあ急いでいこう」

フェンリはうんざりした様子で歩き出した。

「いや…今日はもう時間がない。日が傾いている。今からピオン山に入るのは危険過ぎる。」

「…じゃあ」

フェンリはじっと私を見た。

「ザンネの洞窟とやらで野宿。もし寝泊まりできる環境でなければ、その辺に寝転がるしかないな」

「ふふっ」

フェンリはくすっと笑った。

「何がおかしい」

私はフェンリを睨んだ。

「なんか楽しくなって来たよ」

「ふざけるな。遊びにきてるんじゃない。こうしてもたもたしている間にもアリスがどうなっているか…」

フェンリは私の気迫を察して、顔を引き締めた。

「ごめんごめん。わかってる」

「わかってない」

「アッシェン」

フェンリはそっと私に近付いた。あと一歩のところまで近づいて来たので、私は少したじろいで、一歩下がった。

がしっ

「アッシェン。逃げないで」

フェンリは、そういって、私の肩を掴んだ。



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