「サク!!歩くの早いよ」
4,5メートルほど後ろから声が聞こえた。
一時間ほど前は隣で歩いていたはずの、ジャックだ。
「ジャックが遅いだけです。急がないと日が沈んじゃいますよ」
「ば…馬鹿言うな!かれこれ朝からなーんにも食ってねぇんだぞ?歩けるわけがないだろう」
サクヤは立ち止まり、後ろを振り返った。
「あと10分もしたらトキタ村に着きます。それまで我慢してください」
「腹減って動けねぇよ」
駄々をこねるジャックを置いて、スタスタと歩き始める。
「食料を一気に食べたのはあなたでしょう?私の分まで食べておいてそれはないですよ」
それからサクヤは立ち止まりもせず、振り向きもせず、ひたすら歩いていった。
ジャックはサクヤの後を追うように小走りで、よろける体を前に動かしていった。