僕は、その光景を見ても、不思議と冷静だった。
響の心が
泣いている
響は、苦痛の表情のまま、ゆっくりと、ちさから手を離した。
そして、背を向け、歩き出した。
少しずつ離れていく響の後ろ姿を見送るちさが、その時、
「響!」
叫んだ。
足を止め、振り返る響に言った。
「手紙…書くね!帰って来たくなったら、その時は、みんなで待ってるから!これは…!別れじゃないよ…!」
そして
「行ってらっしゃい!頑張って!」
流れる涙はそのままに、ちさは、最後に笑顔で響に手を振った。
響は、大好きだったちさの笑顔に見送られ、満たされたように、
「じゃあな!」
と、手を振り返し、公園から姿を消した。
響が居なくなった公園。
ザワザワと、並木が風に揺られて音をたてる。
ちさは、がくん、と膝を地面につけ、
「う……うぅぅっっ…!」
泣き崩れた。