――――カァン
刃と刃のぶつかり合う鋭い音。
――――キィン
相変わらずカロウドの斬撃は凄まじい。
しかし攻撃に先程までのような重さはなかった。
刃がぶつかり合う度に赤い花が点々と床に咲く。
それは、剣の拒絶反応によって傷ついたカロウドの血だった。
血を流し過ぎたのかカロウドが剣を握る力は甘く、その為に一太刀の重さは次第に軽くなっていくのだ。
カァン、という音と共に剣が宙高く舞う。
剣は何度も回転しながらやがて赤い花が咲く床に刺さって止まった。
ランスォールの手に武器はない。
剣を弾かれたのはランスォールの方だったのだ。
「はぁ、はぁ」
ランスォールの息は大分上がっている。
(ここまでかよ――くそ、)頬を汗が伝う。
いつの間にか、ランスォールは祭壇まで追い詰められていた。
(こりゃシーラと同じ死に場所になりそうだな…)
――――それも悪くないか
そう思った刹那。
ランスォールは自分の耳を疑った。
「―――――な…」
「な、んだ…この唄声は…ッ」
ランスォールの喉元まで突きつけられていた剣の切っ先が震え出す。
やがてカラン、という音をたてて剣は床に倒れた。
どこからか流れてくる唄声にカロウドが耳を塞ぎ苦しむ。
その唄声は、ランスォールが永遠に失った筈のものだった。
ランスォールが振り返るがそれは依然床に横たわったまま動くことはない。
ただ優しい、旋律だけのシーラの唄声が響くだけだった。