「こっち…見て」
その言葉に、どんな意味があったのか。
僕にも分からない。
今、僕じゃない、誰かを想ってる、僕の好きな人。
今は、響を想ってたっていいよ。響とちさの間に、どんな想い出があったって。僕は受け入れられるよ。
でも。僕はここにいる。ちさの側に、いるよ。
ちさは、こちらに体勢をずらし、
「見てるよ…」
そう言った。
真っ直ぐ僕を見るちさを、もう1度、正面から強く抱き締めた。
響。
お前が残していったものは何だろう?
ちさの心にある、お前の存在?
俺とちさとの在り方?
お前の決断は、僕らにどんな道標をもたらしてくれたのか。
シュン!シュン!
沸騰したヤカンの音が、辺りを包んでいた。