「ふーん、そっか。まぁ、あいつも忙しい身だしな…。仲介人ってのも難儀な仕事だよなぁ」
パリッと煎餅をかじりながら他人事のように言った。
「…ですけど、その依頼を受けて、命を懸けるのは慎弥さんの様な人達です。あまり他人事ではないと思いますが…」
その口調を聞き咎めてか、奏が少し声色を変えて俺を諭した。
「そりゃあ、まあな。だけど別に受ける依頼全てが命懸けって訳でもないだろう?昨日終えた依頼だってただの猫探しだったし」
「そうですが…」
なお食い下がろうとする奏を俺は黙らせた。
「そんな心配するな。危ない依頼つったって俺はまだ駆け出しなんだからそんな死に掛けるようなもの、早々受けねえよ」
なっ、と言って俺は一枚目の煎餅を食し終え二枚目に手を伸ばした。
「…」
奏は、幾分納得してないような表情をしていたが、すぐにその表情を崩し何事もなかったように煎餅をかじり始めた。
こいつは未だに俺がこの仕事をしていることに納得いっていないようだ。
だけど、それは仕方がないことだ。