満たされない。
いくら求めても。
いくら与えられても。
私はおかしいんじゃないか?そう思ってしまう程だけど,この衝動を止める術が無い。
ある人は言う。
「いつかは死に逝く定め。ならばやりたい事を命ある限り大いに楽しめ」と。
またある人は言う。
「人間には理性が備わってある。これを使わず過ごすとは,野良犬や山猿と同じではないか」と。
またある人は言う。
「物事にはそれ相当のリスクがある。代価を払わずにそれを得る事は出来ない。もしも等価交換でなくてもお前はそれを望むのか?」と。
私はこのまま,父親の様になってしまうのだろうか…。
あの時の忌々しい記憶は,今でもハッキリと覚えている。
鮮血に染まる床。
切り離された腕。
涙き叫ぶ声。
立込める獣の匂い。
思い出すだけで,体が震えてくる。
嫌だ。
私はアレだけにはなりたくない。
私は最後まで人間として生きたい。
ゼーゼーと肩で息をする。
押さえても押さえても
沸き上がる衝動と私は闘う。
「こんな所にいたんだ。」
ネオの声が徐々に遠のく。
視界が狭くなっていく。
「おっと…ヤバイ。」
ネオは肩に掛けた鞄から注射器を取り出す。
「だから無理なんだよ…。」
いっその事,このまま目が覚めなければこの悪夢の様な世界から救われるのに…。
遠のく意識の中で私は心底思うのだった。
続く→