帰宅途中、近所の高校の前を通る。この高校は藤宮高校とは違って進学校でもなければ、伝統校でもない。それだけに藤宮の連中は見下してる・・というか、眼中にないのかも知れないが・・「よお!松川!」不意に後ろから声をかけられてびくつく。見てみると中学時代の友達だった。しかも親友。前ちゃんだ。「お、前ちゃん!おひさ」と言って微笑んだ。学生とまともに話すなんていつ以来だろう。「なんだ、一人なのか?」前ちゃんのその言葉が耳に痛い。前ちゃんと一緒に帰ることとなり、前ちゃんは遊びに行こうとしていたツレの誘いを辞した。 俺は実によくしゃべったと思う。レゲエやらマンガやら、普段抑圧されてるモノを吐き出した。なんだか悲しくなるくらい楽しい時間だった。前ちゃんも実によくしゃべった。前ちゃんは藤宮の生徒とは大違いだ。自慢もしなければ嫉妬もしない。俺が藤宮に合格した時も自分のことのように喜んでくれた。今更ながら良い友達だと思った。話が一段落したころ、前ちゃんがふと聞いてきた。「藤宮ってどんなトコなんだ?」俺は言葉を繋げなかった