最期の恋(19)

MICORO  2009-07-12投稿
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私はその場にいたたまれなくなって、コウの手を引いてマクドナルドから飛び出した。
駅前の花時計の前にコウを座らせ問い詰める。
「ねえ、コウ。正直に言って。私と一緒にいて、本当に恥ずかしいと思ったことはないの?コウのお母さんより、年上のおばさんだよ。マックにいた女の子達が、何て言ってたか、聞いたでしょう?」
「聞いたけど…。好きなんだから、全然平気だよ。それに、僕にはお母さんはいないし…。それとも、さゆりさんは僕なんかじゃ恥ずかしい?」
コウは相変わらず平然として問い返してくる。
「そういう訳じゃないけど…。でもコウは、本当に私なんかでいいの?私ね、自分に自信がないから、心配で仕方がないの。バツイチで年上で…、おっぱいも片方しかなくて…、それに…」
涙が溢れてきそうになる。それを必死で堪えながら話す私の言葉を遮るように、コウは黙って肩を抱き寄せた。
再び唇を重ねてくる…。
私は目を閉じる。
長いキスのあと、コウは額を合わせ、私をじっと見つて言った。
「さゆりさん。不安になった時は、いつでも僕に言って。どんな事をしてでも、きっとさゆりさんの不安を拭ってみせるから」
コウの手が、左胸に触れる。
「さゆりさんの気持ちを絶対に裏切ったりしないから」
わたしの心が、とろけていった…。


「あれえ!婦長。再婚ですかぁ?」
更衣室で、左手の薬指に嵌めたシルバーのリングを眺めていると、夏川涼子が能天気な声で言った。
「あはっ、まさかあ」
「じゃあ、ポージー?」
探るような目で私の顔を覗き込む。
「まあ…、ね」
少し迷ったが、否定しなかった。
「もしかして、孝一君、ですか」
涼子がずばりと訊ねる。
今度は素直に頷いた。
「うん…。昨日、買いに行ったの。コウが、バイト代が入ったから見に行こうって。ちょっと恥ずかしいんだけどね」
「何で恥ずかしいんですか!婦長、良かったじゃないですか。これでやっと婦長にも…」
涼子の目が、早くも潤みはじめている。
だけど、ちょっと意外だった。
涼子の性格だと、
「婦長、高校生相手に、何を舞い上がってるんですか!」
と、軽くいなされると思っていた。
「おかしくない?」
私は恐る恐る訊ねた。



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