「え!?アンタ達まだキ…もがっ!」
わあぁぁっ!
叫びかけた恋歌の口を、瞬時に塞いだ。
「バッ…!ここで言うなよ!」
ここはアニメーション科の教室。他の生徒もいる。
コク、コク、と頷く恋歌を見届けてから、ゆっくり、恋歌の口から手を放す。
「…まだキスもしてないの?アンタ達、付き合って何ヵ月…?」
今度は囁くように言う。
「………」
「…………」
言葉を失う恋歌。
そんな気なんてなかった。
いや、それは詭弁だな。
ちさに触れたい。
そんな思いがないなんて、到底言えない。
だけど。
考えてもみろよ。
この数ヵ月間、制作に重きを置いていた。
響との事があった。
そんな時に、ちさに触れたいなんて。
違う。
そんな理由じゃない。
僕自身が、怖かっただけ。
触れてしまえば、多分、僕は歯止めがきかない。
ちさへの独占欲が、僕を支配するだろう。
響がいなくなったからってその感情に身を任せていい訳がない。
響がどれだけの想いで、ちさに別れを告げたか。
ちさの気持ちは。
「別にそれが全てじゃないだろ。今ちさは、卒業制作にとりかかってる。邪魔したくないんだよ」
それは本当だった。