最期の恋(28)エピローグ―1

MICORO  2009-07-13投稿
閲覧数[543] 良い投票[0] 悪い投票[0]

コウが泣いている。

あんなに固く約束したのに、
私の亡骸(なきがら)に取り縋って、大声を上げて…。

コウ。

もう、泣かないで。

ほら、
涼子だってオロオロしてるじゃない。

ホント言うとね、
私が死んだあと
コウがこんなに悲しんでくれるなんて、思ってなかったの。

そんなに愛されてるなんて、
どうしても信じられなかったの。

だからあんな約束、コウにさせたんだよ。

私が死んでも絶対に泣かないって。

だって、
もしコウが泣いてくれなかったとき、納得できるじゃない?
ああ、
コウは私との約束を守って、
涙を堪えてるんだって。

コウ。
そんなに愛してくれて、
ありがとう。
コウに出逢えて、
私は本当に幸せだったよ

あのね、
毎週アパートで、あなたに抱かれているとき、よく思ったの。
ああ、
今までの辛かったこと、
苦しかったことって、
この幸せのための試練だったんだなって。
頑張って生きてきた私に、
神様がご褒美をくださったんだって。

でも、そんな幸せも
すぐに終わっちゃった…。
長かった試練の割には短すぎるご褒美だったな…。

コウ…
コウ…
私の声、聞こえる?
どうか、もう泣くのはやめて。
そして
静かに耳をすませてみて…。
心の耳で
私の声を聞いて。

……そうよ。
ね?
聞こえるでしょう?

コウ。
私、白状するわ。
本当は私、死ぬのがすごく恐かった。
生きていたかったの。
コウのそばから、離れたくなかったの。
なのに…、どうしてきちんと治療しなかったんだろう。
取り返しのつかない今になって、
すごく後悔してる。
放射線に焼かれても、
抗がん剤の副作用が苦しくても、
コウといられるのなら、
そんな苦しみくらい
なんでもなかったはずなのに…。
バカだよね。
ごめんなさい、コウ。


勇気がなかったの。
おっぱいを切り取られるのが、恐かったの。
せっかく片方だけでも残ったおっぱいを
コウに愛してほしかったから。
抗がん剤の副作用で取り乱す姿を、
コウに見せたくなかったから。
コウの記憶の中では、
綺麗なままのさゆりでいたかったから…。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 MICORO 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ