最期の恋(29)エピローグ―2

MICORO  2009-07-13投稿
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コウ。
本当にごめんね。

「さゆりさんがどんな姿になっても愛し続ける」
コウの言葉を信じきれなかつ私を許してね。

でもね、コウ。
後悔してるけど
やっぱりこれでよかったんだって思うの。
だって私は、
ペインクリニックとコウの介護のお陰で、
ほとんど苦しむこともなく命を終えられたけど、
コウはずっと苦しかったでしょう。
その苦しみを早く終わらせることができたんだもの…。
コウは、いくら苦しくても、
少しでも長く一緒にいたいって言ってくれたけど、
私はダメ。
愛してる人が苦しんでる姿を見るのは、
自分自身の苦しみ以上に辛いもの…。

ねえ、コウ。
最期の私のわがまま、聞いてほしいの。
あなたが持っている私の思い出は、
全部処分してほしいの。

写真も、CDも、お揃いのTシャツも…。
そのかわり、
あなたが今、撫でてくれてる髪の毛を、一本だけコウに食べてほしい。
灰になってしまう前に…。
だって、
コウが私の写真や形見の品をいつまでも持っていたら、
これから現れる新しい彼女に申し訳ないから。
今度コウの前に現れる彼女って、奥さんになる人だもの。
何でわかるのか、って?
理由はわからない。
でも、死者には、愛した人の未来が見えるみたい。

僕は一生、結婚しない?

バカなこと言わないの。
コウの人生、いったいあと何年、残ってると思うのよ。
六十年以上も、死んでいった女に縛られるなんて、冗談じゃないわ。
私はそんなこと、少しも望んでない。
私が望むのは、コウがその女性と幸せな家庭を築いて、充実した人生を送ってくれること。
私のことなんか、忘れて…。
でも、もしできれば、
コウが天寿を全うするとき、
『そういえば若い頃、さゆりっていうちょっとイイ女と暮らしたな』って、
少しだけ懐かしく思い出してくれると嬉しいな。

今度出会う女性って、どんな人かって?
それは秘密。
でも、とってもステキな女性。
私よりずっと若くて、優しくて素直で…。
でも、芯のしっかりした女性。
とっても健康で、あなたの赤ちゃんを何人も産んでくれて、
明るい家庭を築いてくれる女性。
そして…、
コウの記憶の中から、私の存在を消し去って、
幸せに導いてくれる女性……。



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