最期の恋(最終回)エピローグ―3

MICORO  2009-07-14投稿
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だから私は、自分の全てを、その髪の毛一本に託して、あなたの中で生き続けます。
決してあなたの邪魔にならないように…。
あなたが、私の存在すら忘れてしまうようなかたちで、
あなたをずっと見守ります。
大切な奥さんと、可愛い子供たちの幸せを、見守ります。

ナースだっていうのに、非科学的?

……だよね。
でもね、科学で説明のつかないことなんて、いくらでもあるのよ。
だって今、
現実に死んでしまった私が、こうしてコウと話してるじゃない?
これは、幻想なんかじゃないのよ。
心の声で話してるの。

それにね、
私はもう吉村婦長じゃないもの。
患者さんのお世話をするナースじゃないもの。

あなただけを愛し、あなただけのために最期の半年間を生きた、吉村さゆりという、ただの女だから。

愛する人の幸せだけを願いながら逝った、ただの女だから…。

ナースとして数え切れないほどの患者さんのお役に立てたことより、

あなたひとりに愛されたことが、私の四十六年の人生でいちばんの誇り。

そして、
死の瞬間まであなたを愛し抜いたことが、私の人生の勣(いさおし)。


コウ…。
ありがとう。

私の最期のわがままを聞いてくれて…。

ねえ、コウ。

涼子の言ってたこと、
嘘っぱちだったね。
人間は死んだら、おしまいって…。
人間は、肉体が死んでも、
魂は、愛する人の心の奥で、
生き続けるんだね。

じゃあ、
さゆりはもういきます。

あなたが今、口にしてくれた
一本の髪の毛と共に
あなたの心の奥に入っていきます。

コウ。

さようならは言いません。

だって
お別れじゃないから…。

そのかわり…

愛してる

愛してる

愛してる…。


  ――――了――――



☆最後まで読んで下さってありがとうございました。
MICORO

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