揺られながら

LEON  2009-07-14投稿
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君が微笑むから,僕はどうしていいか分らずに目を伏せた。

朝の人並みに,君は見え隠れして揺れる。


ここから2つ目の駅。


僕と同じその駅で君は降りる。どこから乗って来るのかは分らないが,いつも同じ3両目に乗っている。


君を初めて見た時,僕は妙な気持ちになった。


胸が苦しい様な,疼く様な。
これが恋なのかは分らないがどうも気になってしまう。


僕は決して卑怯な男ではないが,君に気付かれないように微かな隙間から君を見た。

何となく切ない気持ちになる。

何のだろう?
この気持ちは…


「次は〜羽山,次は〜羽山」

駅に着くと,まるで洪水の様に人が外へとなだれ出す。


「あの…」

背後からか弱く呼び止められ振り返ると君がいた。

「あの…」

どうした事だろう。気付かれないように見ていたつもりだったが…もしかしたら不快な気持ちにさせたのか。

「あの…もしかしてタケル君?」

君が僕の名前を呼ぶから,これがあまりにも意外な展開だから,僕はただ

「あ…ハイ」

とだけ答えた。

すると君はまるで,大袈裟じゃなく本当に太陽の様に微笑んで

「私サキだよ!!隣りに住んでた…」

と子供の様にはしゃいで見せた。


俺はやっとこの妙な気持ちの正体が分った。

「サキちゃん…!!!」


20年ぶりにその名前を呼ぶと,淡く甘酸っぱい初恋の記憶が蘇った。




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