あれから1ヶ月…2ヶ月と過ぎていき、あの僕にとっては変化の日がやってきた。
6月9日。日曜日。
僕は休みなので遅く起きた。
メールを確認すると、
『オッス!オレ総合体育館で今部活終わったとこ。ちょっと渡したいものがある。来てくれないかな』
「龍吾…」
龍吾の大切な里親が亡くなってもうすぐ2ヶ月。龍吾は前のように明るく振る舞ってくれていた。「よし。」
僕は行く準備をした。
渡したいもの?なんだろう。
自転車で5、6分の所にある総合運動公園。
野球場の近くに龍吾がいた。
時刻は午前11時。
「いた…。」
いざ龍吾を見つけると、僕は何故か急に不安になった。
だって…今日は…。
「お父さんが来る日…。」
嫌な予感がした。
そんなことを考えていたら、龍吾は既に目の前に来ていた。
「よっ。」
「久しぶり。」
「そうだな…。」
龍吾は何かポケットの中を探っている。その後、バックの中をあさった。「なに探してんの?」
「ちっと待って…。」
「?」
渡したいものって…
「はい、誕生日プレゼント。少し早いけど。」
「そういえば教えたんだっけ…。ありがとう。あけてみる。」
中には、グローブが入っていた。
「また…キャッチボールできるといいな。」
「グローブ…。」
「持ってなかっただろ?」
「ありがとう。」
そしてしばらく無言が続く。
僕は、ついに龍吾に言った。あのことを。
「龍吾。」
「ん?どうした?」
「今日は…お父さんが来る。」
龍吾は、初めて会ったときの会話を思い出した。『2ヶ月後にお父さんが来る。』
「あぁ…そうだったな。」
「嫌だ…。」
父親がいたから、僕はどんどん、弱くなっていったんだ…。
ヤダよ…。またバットで殴るなんて…。