草木も眠る丑三つ時...
夜行性動物 哺乳類食肉目ねこ科の猫たちの瞳はタペータムによって取り込んだ外光を増幅しキラキラと輝き煌めき爛々と それぞれに特有の色素に彩られた美しい光を放ちつつ、明瞭な像を網膜に結んで生き生きと活発に行動を開始するのでした。
闇夜に寝静まった町中の平穏が、突如として高らかな猫の声によって駆逐されます。
ふっはははははー
我輩こそは神に
愛された孤高の
怪盗!その名も
ねこひげであーる
!!!
さあ!おとなしく
素直に その笛を
我輩に寄越すが
いい!!!
口を閉ざすと目しか見えない真っ黒黒の毛並みは人も羨む美しい艶を放ち、確かな骨格に まとった むちむちした筋肉が美しいシルエットと あいまり、美丈夫な いでたちに威厳さえ 漂わせています。
なにさらしとんじゃい われーぇ!
わしの島で 威風堂々 高笑いしてんじゃねーぞ、おんどりゃー!
怪盗ねこひげの ド派手な登場が気にくわなかったのか背中の毛を逆立てて威嚇する猫八の声音も いつもの三割増しです。
だぁまれ!
ブチねこ!
貴様になど
微塵たりとも
用は ないのだ!
すっこんどれ!
ぬぁん どぅわとぉーぉ?!このっクロネコがぁー!
貴様こそ おとなしく荷物運びでもして世間様の お役にでも たっとらんかーぃ!
ぬぅあにを
ぬかすか!
このっ無教養の
ゴロツキめが!
貴様のような
でしゃばりは
我輩の美学に
そぐわぬ!即刻
去り失せるが良い!
おどれの美学なんぞ知ったことくぁー!
いやなら てめーが消えやがれ!
他者の美学を
なじるとは..!
なんたる無礼者か
嘆かわしい!
文化の推進を
妨げる粗野な
やからめ!
このような交友に
甘んじる者の所に
貴重な笛を
おいてはおけぬ!
その笛、我輩が
貰い受けるぞ!
と、いった言葉の応酬がなされ割り込む機を失していた子猫が ここで勇気を奮い起こして叫びます。