研究者Aの記録

ジャーミー君  2006-07-22投稿
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私が酒見町の研究調査に来て3週間経った。ここは良いところだ。自然が豊富で、村人達ともすんなりと溶け込めた。教授が毎年ここを訪れるのも分かる気がする。外国へ出張した教授に、感謝したい。
「こんにちは。またレポートですか?」
私が神社を見ながらレポートを書いていると、後ろから声がした。首を後ろに向けると、制服を着た小柄な少女が微笑みながらこっちを見ていた。誰かはもう知っている。私が宿泊でお世話になっているフク江おばあさんのお孫さんだ。
「こんにちは茜ちゃん。またレポートだよ。」
「大学生って大変ですね。毎日レポート書かないといけないんだから。」
「正確には大学院生だけどね。ところで茜ちゃん、学校は?」
「今日は出校日だったから、午前中で終わりなんです。」
彼女は頭の後ろにタオルをかざしながら答えた。細く、白い腕が日差しに当たり、光っている。
「なるほど。」
私はレポートが書き終わり、ノートを閉じた。
「でも、何でこんな小さな神社をレポートに書いているんですか?隣町には、もっと大きな神社があるのに。」
「僕が調べているのは、ああいう感じとはちょっと違うんだよ。そうだな…例を挙げると、風習とか、身近にあったものなんだ。」
「ふーん。」
茜ちゃんは、よく分からないといった風に首を傾げていた。
「そういえば、隣町の神社といえば今日の夜、夏祭りがあるらしいじゃないか。」
その言葉に、彼女はすぐに反応した。
「そう!友達と一緒に行くんですよ。もう、ワクワクしてます。」
彼女の表情を見ると、本当に待ち遠し気にしているのが分かる。
「そうだ!一緒に行きませんか?」
「…え?」
突然の誘いに、少し戸惑ってしまった。 「でも、友達と行くんでしょ?」
「いいじゃないですか。保護者ということで。それに、夏祭りも風習ですよ。」
そんな会話が続いて、とうとう私は行くこととなった。
「じゃあ、出発する時間は6時で。」
「分かったよ。それじゃ、帰ろうか。」
私と茜ちゃんが神社を後にしようとしたその時、
「ビキィッッッ!ミシミシミシ…ズダン…。」
突然、鳥居が真っ二つになって倒れた。茜ちゃんは、驚いて私にしがみついた。私も、少し呆然としていた。
私達は不吉さを感じながらも、改めて神社を後にした。蝉が、何も知らないかのように鳴いていた。
続く

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