給料半分の差し押さえ…。弁護士が言うには、養育費を全く支払っていない人も世の中にはいるので、法律が出来たと言うが、淳達は額は少し減ってはいたが、支払っていた。
近所付き合いもトラブルにしてしまう、美佐の基本的意地悪さが、美佐側の弁護士をまくし立てた結果であった…。
額を減らしていた月から今月までのボーナスを含めた、80万を支払えば差し押さえはしない。との事だったが、結果として、会社側にも通知が届いているので、淳の立場にも影響した。
美佐側の弁護士も淳側の弁護士に電話を入れ、同情の旨を話していた。
淳は美佐へ憤りを感じずにはいられなかった…、会社側も今の家族をしっかり守る事を心配した。
少しばかりは貯めてはいたが、今まで生活らしい生活ではなかったのに…。
淳は金をかき集めなんとか用意した。その為に親戚や金融から借金をする事になった。
しかも、会社からも異動が命じられ、今のとこから、電車で1時間もかかる営業所であった。
今まで会社の近くに住んで来たので、昼ご飯は家で簡単に済ませていた。
それが出来ないとなると、かなり金銭的にも困る。 亜子はお弁当を提案した。中学生の弁当も毎日作っているから、と言う事だった。
淳は金はないが、そんな提案に家庭の心の平和さを感じた。前の生活なら、金がないから飲みに行くな。とは言われても、弁当を作ると言う事にはならなかった。仕事に行け、と言うわりに、昼御飯の金を怪訝そうに渡され、少しでも高いと、猛烈な愚痴になる…。 淳は亜子と一緒になれた事に安らぎを感じた。
亜子はいつでも前向きだった、淳と共に生活している事が幸せだった。が、淳の過去についた嘘に関してはまだ心の傷は深く、癒えてなかった…
子供三人も育てながら、前の旦那に金銭の要求をしていなかったのは、気持ちを持って子供達に向き合う事が重要だったからと、彼女なりの前の生活に対しての敬意だったのだ。不幸にして別れたとは言え、一度は生活を共にしてきた、言わば仲間に対しての敬意だ。
亜子は同じ女の立場として、美佐に対し、淳に全く気持ちが無かったと確信し、淳は愛情のない女とある女の違いを確信した。
「結局、あいつは金ばかりの奴だったんだよ。」
前の生活は何だったのかと虚しさを感じずにいられなかった…