急すぎて話がよく分からない。
僕の頭の中はパニック寸前だった。
「行くぞ。」
相変わらず運転が荒い。車が西中の前で止まった。
すると父がまた、
「どうする。ここで痣だらけになるか、とっとと転校するか。選べ。」
僕は、殴られる方を選ぶしかなかった。
こんな人…父でもなければ、もはや人間でもない。またあの時の記憶が蘇る。
だけど…転校したら僕も悲しむし、龍吾も悲しむと思う。
「いいよ、殴って。」
「ほぅ。」
バットが…振り落とされる。
一発…当たった。威力が凄まじく、僕は倒れた。「弱っちいなぁ。」
殴る音は止まることはない。
血が…にじむくらい殴られる。
どんどん…どんどん…
意識が朦朧としてきたそのとき、自転車が目の前で止まった。
…誰?
「オレの友達に手を出さないでもらえますか。」…龍吾だ!
微かな意識の中で確信した。
「…誰だお前。」
「みーくんの友達の、飯岡龍吾です。」
「バカげた子だ。早くどっか行きな。結局お前はオレにはかなわない。」龍吾はこっちを見て、
「オレが、味方だから。」
と言った。
ありがとうって言ったけど、聞こえてないようだった。
「あなた父親ですよね?まっ…オレが言うのもなんだけど。」
すると父の声色が変わった。
「どういう口の聞き方してんだ?」
父は龍吾の胸ぐらを掴む。
「バットは…殴るもんじゃありませんよ。」
「殴るものじゃなかったら何なんだよ?言ってみろ!」
父は龍吾を揺すり始める。
「野球をするための道具…ですよ。」
「へ〜。これでバットの使い方は2つになった」「はぁ?」
龍吾は敬語の限界を超えた。
「今から教えてやる。バットは殴るもんだって事を!」
龍吾にも手を出すなんて…。
最低だ。