むき出しのコンクリート。
私の目の前には灰色がただ冷たく広がる。
体を起そうと力をいれるが,頭が10cmも上る前に崩れ落ちた。
頭が割れるほど痛い。
「無理だよ。まだ鎮痛剤が効いてるんだ。」
ネオがカチャカチャと金属音を鳴らしながら,私を見た。
「私…」
「ったく。世話やかせんなよ。」
ネオがミルクの入ったカップを差出す。
ネオの冷たい手に触れて,私は心が痛んだ。
銀色に光る無機質なそれは,ネオ本来の物では無い。
あの日ネオは腕を無くした。
私がどう償っても,もう取り戻す事の出来ないそれの代わりに,私はネオに金属製の義手を作った。
私に出来る精一杯だった。
私の目線に気付いて,ネオがふざけながら言う。
「最近これ,ガタがきてんだよ。新しいの作ってくれないか?」
「………ぅん」
ミルクを一口含むと,少しだけ気持ちが落ち着く。
「また……………行こうとしたのか?」
ネオが木製の古ぼけたイスに座りながら,ため息混りに言う。
「ネオには関係ないじゃない」
私はぶっきらぼうに言うと,カップを置いた。
「何でだよ?ここに居ればお前は…」
「それじゃ駄目なんだよ。いずれはあの人みたいに………」
重苦しい空気が部屋中を漂う。
私は毎日恐怖と闘っている。ここに居れば,確かにアレを抑えられる。
けど,いずれはコントロールが効かなくなるんだ。父親の様に。
そうなれば,また大切な人を傷付けてしまう。
私の時は,腕だけでは済まないかもしれない…。
だから…。
私は一気にカップの中のミルクを飲み干した。
続く→