「確かにマキも言っていたわ。この戦、何かあるって」
ウリューゼアは真っ直ぐにリュウの瞳を見て言った。
「姉上の占にも出ていたらしい。紅い国のほうに俺が来ることになった理由の一つだよ」
リュウはウリューゼアの長い髪を一房手にとって軽く引いた。
それにつられるようにウリューゼアはリュウの腕の中に抱かれた。
「あの時の傷はほとんどなくなっているみたいだな」
髪が背中から流れ落ちて微かな傷が露わになった。
「だっ、大丈夫だよ。こんな傷、もうほとんど判らないでしょ?」
ウリューゼアは朱くなりながら答えた。
「バカなことをしなきゃ、俺が心配するわけないだろ?」
傷痕を優しく撫でながらリュウは言った。
「あの時は、ありがと」
ウリューゼアは俯いたままで礼を言った。
「もう、俺がいない所で傷つかないでくれよ。あの時のようには飛べないんだからな」
「わかっているわよ。あなたの命が半分、私の中にあるのだもの、あなたの能力がどのくらい落ちたかなんてわからない方がおかしいわ」
まだ紅い顔をしたままで、ウリューゼアはリュウを見上げた。
「あの時は本当に間に合って良かった。大切な君を失っていたらと思うとゾッとする」
リュウは強くウリューゼアを抱きしめた。
「ゴメン、なさい」
リュウの背中に手をまわして、ウリューゼアは謝った。
「もう一つの理由、君に会いたかった。本当は青い国に行くはずだったんだけど、兄上に諭されたよ。大切な君を守ってあげろってね」
髪を撫でながらリュウは言った。
「王も困ったことを言うのね」
リュウの腕の中でウリューゼアはクスクスと笑った。
「やっと笑ったね。やっぱり君は笑っていた方が良い」
リュウも笑い返した。その顔があまりにも綺麗でウリューゼアは見とれてしまった。
「何かついてる?」
ウリューゼアに見つめられてリュウは顔に手をあてた。
「ううん、何でもないのよ」
ウリューゼアはリュウの腕の中に体を預けた。