A太とU子は、ある携帯小説サイトを通じて知り合った。
きっかけは、U子の投稿からだった。
その携帯小説サイトの『日記』のカテゴリーに、U子は他愛の無い一日の出来事を載せた。
A太はそれを読み、ほのぼのとした気持ちになった。そしてU子に対し、素直なコメントを入れた。
「ありがとう」とU子は返した。「貴方の事も少しだけ知りたい」U子はそう付け加えた。
A太は嬉しくなり、今度は自分の日記を載せた。飼い犬のこと、好きな本のこと、本当に他愛の無い日記だった。
それでもU子は面白がり、コメントを入れてくれた。
A太はそんなU子のことを、堪らなく身近に感じた。
それから二人の、サイトを通じた交換日記は続いた。
すぐに言いたいことがあれば、コメントを入れた。
時には親密なやり取りが続く日もあった。
そんな時は、お互いの大切な言葉を「非表示」の中にそっとしまいこんだ。
A太は、U子との毎日が楽しくて仕方がなかった。
A太にとって、空虚な日々の生活よりも、U子と話している時の方が何倍もリアルだった。
――いつかU子に会いたい。
A太の、U子に対する気持ちは日に日に膨らんでいくばかりだった。