A太はある日、U子の日記に「会いたい」とコメントを入れてみた。
――それが無意味なのは分かっていた。
ここは出会い系ではなく、携帯小説サイトだ。
U子だけに連絡先を知らせる術は、無かった。
U子からは「今のままで充分楽しい」と返事が返って来た。
数週間が過ぎ、A太は自分の気持ちを抑えることが出来ず、日記の中にU子を愛する気持ちを切々と綴った。
その日の日記には、数多くのコメントが返って来た。
心ない誹謗・中傷に混じって、幾つかのU子からと思われるコメントが載っていた。
しかし、どれが本物のU子のコメントか分からない。
A太は思い出した。
――大切な言葉は「非表示」の中。
A太はコメント上部の『非表示も表示』のボタンを押した。
非表示からは、ただ一言「アリガトウ」の文字が出て来た。
3日後、U子の日記が掲載されていた。
その中には、今まで知らなかった彼女の普段の生活が書かれていた。
年上の旦那のことや、2人の子供への子育てぶりなど。
A太は幸せそうなU子を想像し、微笑みながら日記を読んだ。
そして「アリガトウ」とコメントを残し、非表示のボタンを押すと、A太は静かに携帯を閉じた。