MLS-001 013

砂春陽 遥花  2009-07-24投稿
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大男の影に
小柄な人影が見える。

女だろうか。

ビンヒールの靴で蹴られたらしく
明広の下唇は
派手に切れていた。

多勢に無勢でも
諦める訳にはいかない。


早くしないと
彼女、遠くへ行っちゃうわよ。


女の声が
明広の耳に蘇る。

巨体を前に、策などない。

でも、何としてでも
花鼓を
取り返したい。

明広は
よろめきながら
立ち上がった。

無謀と分かっていながら
自分の全エネルギーを掛けて
花鼓のところへ
真っ直ぐ走った。

2メートルの巨体が
迫って来る。

大男のわずかに手前で
弾みをつけて
飛びかかった。


バカな男。


晴牧の後ろで見ていた真龍は
鼻で笑った。

晴牧の拳が
明広の脇腹にのめり込む。

明広は木切れのように
宙を飛んで、
細い肩を
コンクリートの壁で
したたかにぶつけた。

グキッ

体の中で鈍い音がして、
右半身の血の気が
さあっと引いていくのが
分かった。

激痛に
思わずうずくまる。

「行きましょ。」

聞き覚えのある女の声。

顔をあげると、
3つの影が
割れた窓から夜風の中へ
消えて行くのが見えた。

諦めたのか
肩の上の人影は
ぐったりしていた。


花鼓が、行ってしまう。


絶望が
ゆっくりと
明広の意識に
黒い幕を引いていった。



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