【楽園】第二話
名無しはあっと言う間に、目覚めた場所から飛ばされました。
時間の感覚のなくなっていた名無しは、どのくらい飛ばされたのかわかりませんでした。
そして、竜巻が案内をするように、静かに打ち返す波のある海辺へと運んでくれました。
海辺で何をするでもなく、打ち返す波を眺めていました。
すると
一人のおばあさんが声をかけてくれました。
「こんな夕暮れにどうしたの?」
それは懐かしく優しい声でした。
名無しは何も言えず、おばあさんを見ていました。
何を言わなくても、名無しの心が通じたのか、おばあさんは自分の家に招待をしてくれました。
返事のしのできない名無しに
「綺麗な夕日だね。」
と独り言のように呟きました。
おばあさんは家に着くと簡単な料理だけれど、美味しい料理でもてないしてくれました。
食事が終わるとおばあさんは窓辺に座りました。
名無しも真似するように一緒に座りました。
おばあさんは
「ここは私の楽園。
何もないようで、
全てが揃っている。」
そう言って名無しを見つめて
「いい詩でしょう?」
と言った。
そして、何かを棚から出して来て名無しに手渡した。
何も持たない名無しへの初めての贈り物。
名無しは、ありがとうと言う代わりにおばあさんに笑いかけた。
そして、初めての贈り物「時計」を掌に乗せて見つめました。
「時計」が何かもわからずに。
おばあさんの読んでくれた詩の意味もわからずに。
ただ、あたたかい温もりと優しさを受け取ったのです。