ほんの小さな私事(53)

稲村コウ  2009-07-24投稿
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午前の授業が終わり、昼食を終えた後、私は高野さんと一緒に図書館へと向かっていた。
「ホント良かった〜。沙羅ちゃんが図書委員引き受けてくれて。ホントならクラスで男女一人ずつなんだけど、男子が誰もやらたがらなくってねー。困ってたのよ。」
そう。高野さんが言う様に、私は、クラスの図書委員の空きがあるという事で、図書委員になる事にしたのだ。
今後、かなりの頻度で図書館を使う事になるのは判っていることだし、それと平行して、図書館の内部を詳しく知っておく意味も含めて、図書委員として活躍しようと考えた訳である。
今週は、山下さんのクラスが当番なので、まだ仕事はないのだが、改めて林さんに、図書委員になった事の報告がてら、挨拶しようという事で、図書館に向かっているのである。
勿論、何かめぼしい本を見繕って借りてくる目的もあるのだが。
「一応、当番は来週からだけど、まあ、仕事っていっても、そんなに無いし、楽と言えば楽よ。私なんて本読みながら、適当に過ごしてる事、多いもん。」
「利用する人はあまりいないのです?」
私がそう聞くと、高野さんは苦笑いしながら答えた。
「昼はそんなに多くないけど、一般の人が利用しにくる事があるからね。そこそこは人が居る感じかな?ただ、利用する人は館内で本読んだり、資料探しながら、課題をこなしたり、試験勉強してたりするから、窓口で対応する事とかは少なめ。あと、林さんが、ほぼ毎日常駐してるから、どっちかって言えば、事務室でくつろいでる時間のが長い…ってだけかな?」
「なるほど、そういう事なのですね。」
そんな風に二人して歩いていると、校舎と図書館を繋ぐ連絡通路にたどり着いた。
昨日はこの下の渡り廊下で山下さんが事件に遭遇したのだ。私は窓から下を覗いてみた。
今日は昨日見た赤色の靄は無い。昨日と違い、昼間なので、割りと多くの人が渡り廊下を行き交っている。
「特に何がある…って訳じゃないよね…。昨日のカズちゃんのはなんだったのかしらねぇ?」
私と同じように、下の様子を眺めつつ、そう言う高野さん。
「今後、何事も無いと願いたいです。あの時の山下さんの事は、何かの偶然だったという感じだった…という事であると信じて…。」
「そうよね…。」
私たちは、何事も無い渡り廊下の様子を確認して、改めて図書館への道を進み進めた。



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