「summer time」 No.1

アルパカ  2009-07-25投稿
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夜明け前のうっすら明るい空と、潮の香りを運ぶ心地よい風。

港町にそびえる一軒の家。二階の窓から海を眺める陽介。

「今日もいい天気になりそうやなー。」

背伸びをして窓を閉める。

「陽介ー。ご飯できてるよー!」

「おー。」

母の呼びかけに返事をし、階段を降りる。

木村陽介、25歳。
一年前に父を亡くしてから母と二人暮らし。

「おはよ。もう時間でしょ?
早くご飯食べて準備しなさいよー。」

椅子に座り味噌汁をすする。

「あー、うめぇー。」

「のんびりしてると遅れるよ!」

「はい、はい。」

せかされながらご飯をかき込む。

「今日の店番、彩に頼んどいたわ。」

「またー?いつもいつも彩ちゃんに頼んでばっかで迷惑でしょうが。」

「だーいじょぶやって!
あいつ昼間ヒマみたいやし。」

「あんたにね、あれもこれもできるわけないんだから店辞めるか、アルバイトでも探したらどうなの?」

「あんなヒマな店、バイト雇っても給料払えんでしょ。でも店は辞めねぇよ?」

「だからって彩ちゃんにばっか頼っ…」

「んなら行ってきまーす。」

母の話を途中でさえぎり、立ち上がる陽介。

「いってらっしゃい。」

半ば呆れた様子で見送る母に背を向け、弁当をかつぎ軽トラックに乗り込む。


同じ頃、都心のあるマンション。

薄暗い部屋の中、パソコンに向かう合う洋人。

「はぁ〜。」

ため息をつき、パソコンを閉じる。

カーテンの隙間から見える街並み。
いつもと変わらぬ景色。

松山洋人、25歳。
地元から上京、就職してから3年目の会社員。

時計を眺めるとすでに出かける時間である。

部屋を出て、いつものバス停までの道を歩く洋人。

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