リレー小説「楽園」:ミッシェル

ミッシェル  2009-07-26投稿
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【楽園】第四話


それからというものの、名無しはおばあさんがくれた時計を片時も離しませんでした。

まるで自分の体の一部のように、常に持ち歩きました。

感情とは無縁な時を過ごしていた名無しでしたが、やがて名無しはおばあさんと一緒に過ごしていくうちに、おばあさんに対して特別な想いを抱くようになりました。

勿論それが何なのか、今の名無しには分かりません。

ただ、おばあさんに対する“感謝”という気持ちは薄々気付いていたのでした。

「一緒に散歩でも行かないかい?」

ある日、おばあさんは名無しにそう言いました。

名無しは何も答えませんが、おばあさんにはちゃんと名無しの心が分かります。

やがて二人は、小さな町へと到着しました。

勿論、名無しの手にはおばあさんがくれた大事な時計が握られています。

おばあさんはとてもウキウキしながら、名無しに色々な事を話しました。

うんともすんとも言わない名無しですが、それでもちゃんと心の中では楽しんでいます。

そして、名無しは時々おばあさんに向けて満面の笑みを浮かべるのでした。




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