そんなメアリーを見つめながら、ゲイリーはゆっくりと彼女の近くまで歩み寄る。
そして、右手で彼女の頬を優しく撫でながら
「いいか‥これは俺にとってとても重要な事なんだ。お前の相手なんて、後でいくらでもしてやる。だから、今は我慢しろ」
だが、ゲイリーのその言葉はメアリーにとってはなんの慰めにもならない‥。
ただ、ゲイリーに対する憎しみの念が募るばかりである。
「もういや‥あなたに何て最初から会わなければ良かったわ…」
彼女はその憎しみのあまり、思わずそう呟いていた。
勿論、ゲイリーがそれを聞き逃す筈がない。
「お前…ふざけた事をぬかしやがって!」
その瞬間ゲイリーはメアリーに鋭い眼光で睨みつけ、右の拳を振り上げた。
それを見て、メアリーは思わず目を瞑る。
だが、次の瞬間には頬に凄まじい激痛が走り、気付けば床に倒れていた。
女だろうと容赦しないこの残酷な男は、メアリーには人の姿をした凶悪な悪魔に見えていた‥。
「は、はぁ‥止めて‥」
メアリーは腰が抜けて動けずにいた。
ただメアリーは涙を流しながらゲイリーを見つめるだけである。
ゲイリーはその大きな手を、おもむろに彼女の首に伸ばす。
そして、徐々に力を入れながら彼女の首を絞め始めた‥。
「メアリー‥忘れたのか? 俺はお前の命の恩人だぞ。それを“最初から会わなければ良かった”だと? 馬鹿な事言うんじゃねェ! 俺と会ってなきゃお前は死んでたんだぞ!!」
ゲイリーはそう言って、更に力を込める。
「一応言うが、もし俺以外の男と寝たり関係を持ったりしたら、お前を殺す! そしてその男も殺してやる‥。俺は裏切り者は絶対に許さねェ主義だからな。
メアリー‥これからはそんな口きかない事だな。お前は俺の為だけに生きてりゃあいいんだ」
彼はそう言い終えると彼女の首から手を離し、床に転がっているアタッシュケースを持って玄関に消えた。
ゲイリーの手が自分の首から離れた瞬間、メアリーは全身の力が抜け、床に倒れたまま彼女は大量に涙を流し続けたのだった‥。
続く