人斬りの花 18

沖田 穂波  2009-07-26投稿
閲覧数[375] 良い投票[0] 悪い投票[0]


3-5 香

抄司郎は柳瀬屋へ戻った。女将のトシは,帰って来た抄司郎を見るなり,

『旦那,大変だよ!』

青い顔をして駆け寄った。

『おっかない妙な連中があの子を探している。今さっき,うちに訪ねて来たんだよ。』

あの子とは,椿の事である。武部の手下が椿の居所を掴んだようだ。

『それで,連中は?』

『必死になって追い返したよ。だけど‥』

武部が簡単に諦める筈がない。絶対に再び現れると,抄司郎は予測した。

『連中に椿さんを渡しては駄目だ。安全な場所へ隠さなければ。』

『でも,一体どこへ?あの子の身を隠せる場所なんて,あたしにゃ心当たりがないよ。』

トシは額に汗を浮かべながら言った。
人が良いトシは自分の事のように考えた。

抄司郎は少しの間黙っていたが,

『ある。』

思い出した様に,顔を上げた。

『師匠の所だ。今すぐ師匠のいる所へ連れて行こう。』

急ぎ椿のいる部屋へ入った。
椿は自分が武部に狙われているなど知らず,何事かと言う顔をした。

『今すぐここを出ましょう。椿さんには,暫く身を隠しいて貰わなきゃならないんだ。』

『何故,身を隠すのですか?』

突然こんな事を言われても,椿はうろたえるしかない。

『それは‥。』


その時,トシの悲鳴が聞こえた。
武部の手下が現れ,強引に踏み込んだらしい。

『兎に角,来て下さい。』
椿の手を引いた。
椿は挫いた足を気にしながら,足の速い抄司郎に必死について行った。


≠≠続く≠≠



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 沖田 穂波 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ