「勘弁してくれよ・・・」
啓吾は、小さい声で言う。啓吾達5人はダラットに来ている。そこにいる泥棒を捕まえるのがこれからやることだ。
「啓様ぁ。これからどーするんですか?」
李那(りな)が、啓吾の隣に来て言う。
「啓様って呼ぶな!」
と、言って啓吾は歩くペースを速めた。だが、李那も早足になって啓吾に追いつく。李那に気がついた啓吾は、また早足で先に行く。その繰り返しだ。
「まったく、李那は・・・」
李那の行動にあきれながら由宇(ゆう)は言う。
「あっ!あれ!」
凛が何かに気がついた。凛が指差す方を見ると宝石店から勢いよく出てきた泥棒が走っていく姿があった。
「ま、間違いない!あれだよ!」
怜は、大声で言う。啓吾は泥棒の姿を見ると、勢いよく走って言った。怜達も泥棒の後を追う。
「畜生、思ったより早いな・・・」
啓吾と泥棒との間はどんどん長くなっていく。泥棒の肩には大きな袋がさがっていてその中に大量の宝石が入ってるはずなのに、泥棒の走るペースはどんどん速くなっていく一方だった。
「これじゃ、追いつけねぇな」
と、言うと啓吾は足を止めて右腕を後ろに引いた。そして、思いっきり突き出そうとしたが・・・
「啓様〜ぁ」
後ろから李那が走ってくる。啓吾にはその声は届いていない。
「啓様」
もぅ1度呼ぶが啓吾には届かない。
「啓さ・・・」
もぅ1度呼ぼうとしたが地面の段差につまずいて李那はバランスを崩した。しかも、それが啓吾の直ぐ後ろで・・・
「あ、危な・・・!」
最後まで言う暇も無く、李那は啓吾の背中にぶつかり、2人とも倒れた。