子供のセカイ。40

アンヌ  2009-07-27投稿
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心臓が止まるかと思った。美香が小さく息を呑むと、ひゅっと音が鳴った。
舞子。確かにそう言ったのか?それともいつも胸の底で思い続けるあまりに聞こえた幻聴だろうか?
「………ぁ……、」
今、なんて言ったの?と聞きたかったのに、うまく声が出せなかった。美香の様子がおかしいことに気づいたのだろう。ジーナは眉の辺りを曇らせた。
「どうした?具合が悪いのか?」
「……い、ま、…舞子、って……?」
「ああ、舞子と言ったが。彼女はこの“子供のセカイ”の新たな支配者だ。もう着任してから三年くらいになるか?」
美香はその言葉に絶句した。支配者。三年。意味がわからない……。何が起こっているのだろう。耕太救出を優先するあまり、一番の目的である舞子の事を後回しにしていた。後回しにしすぎた。情報を集めることさえせず、今、ようやく事実を知ったのだ。
そういえば、“子供のセカイ”で最初に出会った山姥(やまんば)の老婆が言っていた気がする……。

『アンタ、この世界のことを何も知らんのに、どうやって辿り着くつもりじゃ。道はわかるんか?この世界のルールは?この世界の支配者のことは?』

あの時、時間をかけてでもちゃんと話を聞くべきだった――。そうすれば今、こんなにもショックを受けなくて済んだかもしれないのに。憎らしいほど自信に満ちた覇王の顔を思い出す。舞子の一番の側近である彼が、舞子を唆しているのだろうか?
気づけば美香はジーナに飛び付かんばかりの勢いで叫んでいた。
「舞子はどこにいるの!?支配者ってどういうこと?あの子は何をしたの?覇王は相変わらずあの子の側に――?」
「……うーん…。うるさいなぁ……。」
美香の大声に目を覚ましたらしく、王子がむくりと起き上がった。案の定、後ろ髪についた砂が気になるのか、丹念に払い落としている。
美香の興奮の矛先は王子に向いた。
「聞いて王子!ついに舞子のことがわかったのよ!あの子は無事だったわ。でもこの世界の支配者で…っ、」
「舞子?君は舞子の知り合いなの?」
王子は驚いて目をぱちぱちと開閉させた。そこで美香は、そういえば王子に肝心な目的を何も話していないことに気づいた。

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