考えてみれば家出をしなければよかったと思う。
なぜなら、全てはそこから始まったのだから…
蒼樹純(あおきじゅん)はある日、両親と喧嘩をした。
「もういい加減にしろよ!!」
純は大声で怒鳴る。
「アンタらみたいにクソ真面目に生きたくねぇんだよ!!」
すると、今度は父親が怒鳴り返した。
「親にむかって"アンタら"とは何だ!!」
(要点はそこかよ…)
純はあきれて、荒々しく玄関の扉を開いた。
「待ちなさい!!」
今度は母親が飛び出してきた。
「どこ行くの!!」
純は思いっきり玄関の扉を閉めた。母親を睨み付けながら。
蒼樹純。
中学3年生。
A型。
趣味はギター。
家族は父と母と兄が2人。
兄は双子で髪の毛の色でないと見分けられないと他人は言う。
しかし純は違う。どちらかをすぐに見分けることができる。
双子の兄は仁(じん)
双子の弟は真(しん)
どちらとも大学1年生になりたてだ。
ちなみに兄が茶色で弟が赤茶色だ。他人でもよく見ないと髪の色の区別がつかない。
そんな双子の兄たちも大学生になり、大学の近くのアパートに住む事になった。
家は純しか息子がいなくなったわけだ。
そこで純の両親は出来損ないの兄たちの分まで、純に勉強を集中させた。おまけに親が小学校教師なため、厳しい家庭の中を純は育った。
純の心に、怒りが溜まっていった。それが今回の家出の理由である。
純は飛び出したが良いものの、行くあてがどこにもない。ただ幸運なのは、ポケットにたまたま入っていた財布だけだ。
(こんなことになるんだったら他に何か持ってくればよかったな)
しばらく川のほとりを歩いていた。今日は満月が見えるので、月明りで歩道かよく見える。
(兄貴たちは今ごろ何してるのかな…)
…………あ
純は走り出した。