泣くほど悲しくはなかった。 まだ泣くには早いと思ったし、明確な理由もまた、存在してはいなかった。
けれど、泣きたい、という衝動は僕の心の奥から溢れて止まらなかった。
解決の見えない難題を、何度投げ出したか分からない。
投げ出した難題に、何度頭を抱え直したか分からない。
でも、悩まずにはいられなくて、一人でいると、どうしようもなく、ただ頭の奥から湧き出てきてしまう。
けれど、答えは出ない。
いや…出したくないだけかもしれない。
導き出した最善を、認めたくないだけなのかもしれない。
誰に対しても‥‥、いや、自分に対して幸福な答えが正当化しないかぎり、僕の悩みは消えることはないのだ。
自分の幸福を望み、同等に君の幸福を願う。
決して相容れない願望。
君はもぅ幸福を掴んでいて、それを壊す勇気が自分にはない。
が、諦める勇気もまた、ない。
どこまで行っても一方通行。
際限なく伸びた、矛盾の循環。
夜が更ける真夏の夜に、僕はまたその答えを心の奥で嘆き、陰欝に寝返りをうった。
その日、愛する君の笑顔を夢に見た‥‥。