ポジティブ・アクション4

ミッシェル  2009-07-28投稿
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昼下がりの午後、何時ものように一台の黄色いタクシーが歓楽街を走っていた。

昨日の天気とは打って変わり、空は蒼く輝いている。

やがて歓楽街を走るタクシーは、一軒のバーの前で停車した。

バーの入り口付近に立てかけられている看板には『HOLYLOVE』と書かれている。

タクシーから下り、男は『HOLYLOVE』の扉を開け、迷わずカウンターテーブルへと歩を進める。

「よぉスティーブ! やっぱり来たな!」
カウンターに座る長い髪の男が、間髪を入れずに彼に言った。

彼の名前はスティーブ・ロジャース。

この喧騒と欲望に満ちた街で、タクシードライバーとして平凡に暮らしている。
今日も彼は仕事の合間の息抜きとして、この行き着けのバー『HOLYLOVE』へと訪れたのだ。

「よぉアレックス」

スティーブはそう答え、ゆっくりとアレックスという男の隣りに座る。

その長い髪の男の名前はアレックス・シェパード。

スティーブとは幼なじみで、親友である。

「ケニーさん、ソーダ水を頼むよ」

向かいに立つ男に向かって、スティーブは言った。

「了解」と男は答え、手際よくソーダ水をグラスに注ぎ込む。

男の名前はケニー・ロリンズ。

頬に斜めに入った二本の深い切り傷がトレードマークだ。

ケニーはソーダ水の入ったグラスをスティーブの前へと置く。

そして、置いた時に差し出した右腕には、いくつかの銃弾の痕が見られる。

「どうも」

スティーブはケニーに礼を言い、ソーダ水を口に注ぎ込む。

「なぁスティーブ。今夜もあの娘を迎えに行くのか?」

アレックスが彼に尋ねた。

グラスを口から離し「ああ」とだけ答え、グラスの中で弾ける炭酸の泡を見つめる。

昨日の彼女の悲しげな表情が、彼の脳裏をよぎる。

―――明らかに何時もの彼女と違っていた‥

とても明るく元気いっぱいで、涙とは無縁な女性という印象が強いスティーブにとって、あの夜に見た彼女の表情はとても信じがたいものだった。

何故そんな彼女が涙を流したのか。スティーブはそれがとても気になり、今夜会った時に彼女に聞こうと心に決めた。

そして、そう心に決めると同時に、彼の中で嫌な予感が漂い始めていた‥。



続く


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