「手…暖かいね」
ふと彼が呟いた
『そう?』
「暖かいよ♪」
そう言う彼の手はとても冷たい
冷たくて硬い義手だ
『分かるの?』
「分かるのよ♪」
『義手なのに?』
言ってから少し後悔
本人が気にして居ないからつい言ってしまった
そんな私に彼は笑顔で
「この手じゃ何にも
感じないよ♪
でも心に覚えてるし
心で感じれる♪」
何て言うもんだから
返す言葉が浮かばない
「手は飾りだよ♪
手を繋ぐってのは
心で繋がる前にする事
心が繋がったら後は
飾りでしかないよ♪」
つまり私の心と
貴方の心は…
何て考えてしまう
『そっか』
考えてしまうから
こんな言葉しか
出ない自分が情けない
「さて…帰ろっか♪」
『うん…帰ろう』
彼の手が
二度と握り返してくれない手が
私の心の手を優しく
握り返してくれた
そんな気がした