「そう言われても……確かに舞子が現れたのは三年前なんだよ。この世界の時間の経ち方は領域ごとに違うって前に言ったと思うけど、“子供のセカイ”の中心にはそれらしき法則があって、僕たちはその時間を感じながら、自分の領域の時間とダブらせて時を過ごしているんだ。最も、主要な時間なんて領域を出なければ意味はないし、僕たちは光の子供に時間的なものを教える時、日にちを領域の数に例えて言うようにしているけどね。」
「そして舞子が現れたのはその主要時間で言う三年前。これは確かなことだ。突然やってきて、当時の支配者を引きずり下ろして役についたのだからな。“子供のセカイ”中を震撼させた一大ニュースだ。」
王子とジーナ、代わる代わるの説明を受け、美香の心は浮かれるはずもなかった。
「……それで、今、舞子はどこに?」
力なく聞くと、ジーナは当然だという口調で言った。
「“子供のセカイ”の中心であり、主要時間の流れる場所、ラディスパークに決まっている。」
美香が聞き慣れない単語に顔をしかめていると、王子は少しだけ同情するように眉尻を下げて言った。
「君が舞子を連れ戻しに来た、舞子のお姉さんだというのはわかったよ。それにその様子じゃ、舞子が支配者になってるなんて想像もしてなかったんだろ?」
「あの子、何を考えているのかしら……?」
“闇の小道”に入る直前に見た舞子は、笑っていた。あのうっとりとした表情、願っていたことがついに叶うのだという確信しきった顔は、悲しいほどに満ち足りていて、儚かった。
「支配者の考えなどわからん。私はあいつが好きじゃないしな。」
不機嫌に言い放ったジーナの言葉に、美香は傷ついた。
「何で……あの子は何かみんなに迷惑をかけるようなことをしたの?」
「あいつは人をさらった。今もさらい続けている。正確に言えば人というより、光の子供による空想の産物だが。一体何が狙いなのか……。」
「薄気味悪いんだよね、僕たちにしてみたら。」
「薄気味悪いだけじゃないさ。実害もある。連れ去られた連中は、自分の意志ではないにも関わらず自らの領域を出され、その時に何かしらの代価を払わされているんだ。しかもラディスパークに集められ、何か奇怪な事をやらされているというのが専らの噂だ。」
私の知り合いも連れて行かれた。ジーナは聞かれるのを恐れるかのように小声で付け足した。