ほんの小さな私事(57)

稲村コウ  2009-07-30投稿
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私は、その手に取った古い本と、他に、この地域の明治ぐらいからの歴史を纏めてある本を手に取り、高野さんが言っていた机に向かった。
高野さんはまだ、何処かで本を探しているのだろうか?机には他に誰も居なかった。
私は席に腰掛け、先ずは歴史について書いてある本を開き、読み始めた。
この地域は、戦時中、都会から疎開してやってきた人たちが多数居て、そういう人たちが、この地域を活性させてきたという感じらしい。
また、今、私が住んでるお寺は、かなり古くからあるらしく、そこを中心に、街道沿いに様々な店が軒を連ねて、それなりに栄えていた様だ。
今では街道は商店街に変わっているが、一昔に比べると、随分と衰退してしまっていると書かれているが、それでも私が見て思ったのは、まだそれほど酷く衰退しているとは感じなかった。
他の地域では、シャッターが下りている所が多い商店街の様子をテレビで見た事があるが、そういったものと比べたら、まだまだ、活性しているとは言い難いものの、細々とやっている店が多くあるので、言い方としては、地域密着の商店街になっているのだろう。
また他にも、少し市街から離れた場所の山の中腹ぐらいに、神社があるのだが、こちらは割と近年に造られたものらしい。
と。そんな風に色々と見ていると、本を数冊持った高野さんが戻ってきて、私の隣に腰掛けた。
「あら、沙羅ちゃん、もう本持って来てたのね。…あれ?何?この古ぼっこな本。」
彼女はそう言って、私が持ってきた古ぼけた本を取り、中を開いた。が、暫くして彼女は、眉をひそめた。
「なぁに、この本…漢字ばっかりで読めないじゃない。」
まあ確かに、私も少しページを捲って見てみたものの、読解するのは確かに大変だと感じた訳で…。
「こんなのどこで見つけてきたの?っていうか、この本、本当に読むの?読める?」
そう言う高野さん。
「今、古文の授業が始まっているでしょう?その知識で読める気がして、持ってきたの。」
と言ってみたが、正直な所、理由はそれだけではなかった。

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