通学途中、横からいきなり、トラックが突っ込んで来た。
ここから先の記憶はない。
たぶん俺は死んだのだろう、いや絶対に死んだ。なぜなら、トラックにはねられて死んだ俺を見たから。
ん?、なんか変だ。
なぜ、俺が俺を見たんだろうか。
今、俺は信号待ちで横断歩道の前に立っていて、信号無視をして、トラックにはねられた俺を見たんだ。
いや、まて。
そもそも、俺は、はねられてなんかいないじゃないか。
それじゃあ、俺が見たのはいったい誰なんだ?。
俺は、こんな理解不能といった出来事を何度も体験しときた。
今回の事故にしても、全て、本当に俺の身に起こったことらしい。
中学2年の時以来、俺は『とんでもない失敗をしてしまうと、自動的に時間が戻ってくれている』と言う特殊能力が備わってしまっている。
車と事故を起こせば、そうなる少し前の時間に
ビルの屋上から落ちたりすれば、落ちる少し前の時間に
と、言った具合だ。
おかげで、怪我なんてしなくなったし、色々とメリットもあったのだが、その分、失ったモノも多かった。
まず、毎日の『楽しい』と言う気持ち。
それが、
「無くなった。」