「宜しくスティーブ。じゃあ、話すわ」
メアリーは一呼吸置き、ゆっくりとスティーブに語り始める。
彼女は5年前、17歳の頃、大きな事件に巻き込まれる。
それは、真夏の夜の出来事だった。
一人っ子のメアリーは、父と母の三人で暮らしており、その日何時も通りにメアリーは二階の寝室、父と母は一階の寝室で眠りについていた。
だが、時計の針が12時を廻った頃、悲劇は幕を開けた。
二階の寝室で深い眠りについていたメアリーだったが、一階から聞こえた凄まじい両親の悲鳴を聞いて目を覚ます。
只ならぬ恐怖心が彼女を襲い、メアリーは一階へ降りる事が出来なかった。
両親に何があったのか確認したい彼女であったが、恐怖心が勝り、思うように体が動かない‥。
やがて、両親は“殺された”という考えが浮かぶようになり、それを考えると彼女は自然と目から大量の涙が流れ始めた。
色々考えている内に、ある異変に気付く。
それは、やけに家の中が熱いのだ。
寝室に閉じこもっていたメアリーは、すかさず寝室の扉を開け、外へ飛び出す。
だが、外へ飛び出た瞬間彼女は驚愕した…。
……家が燃えている。
何と、火が一階から二階へとのぼってきていたのだ。
「キャャーッ!! 助けてェー!!」
彼女は悲鳴をあげ、再び寝室へと飛び込む。
息苦しさを感じたメアリーは、寝室の窓を開け放った。
そこで、メアリーはその窓からの脱出を試みるが、ここは二階。
足場も何もなく、下へは降りられない…。
とうとう覚悟を決めたメアリーだが、その時、一人の勇敢な男が寝室の扉を開け、彼女の目の前へと姿を現した。
「大丈夫か? お嬢さん」
男は優しく彼女に言った。
「ゲホッゲホッ、だ、大丈夫よ」
「良かった。さあここから出るぞ!」
「わっ!」
その男は、メアリーを抱き上げ寝室から飛び出した。
男は火の抵抗などもろともせず、物凄いスピードで突き進む。
その途中、メアリーは男の胸の中で叫ぶ。
「パパッ!! ママッ!!」
メアリーはひたすら泣きじゃくった。
「諦めろ‥。もう遅い‥」
そしてついに二人は、燃え盛る家からの脱出に成功したのだった。
続く