その事件で家を無くしたメアリーは、燃え盛る業火の中から救ってくれた、あの男の家に居候する事になる。
その男の家は、自分が元いた町より大分離れた、大きな街にあった。
一流企業の社員である彼はとても優しく、両親の死で酷く落ち込むメアリーを励まし、彼女を献身的に支え続けた。
メアリーはそんな彼に段々と惹かれていき、彼女は居候ではなく、彼の恋人として同棲生活を送る事にした。
メアリーは彼との生活がとても楽しく、とても幸せと感じたのだった。
だが、その幸せも束の間‥。
ある日の事だった。
彼女は夕方、何時ものようにキッチンで夕飯の準備をしていた。
「そろそろ帰ってくる頃ね」
メアリーはそう呟き、時計を見つめる。
するとその時、玄関から扉が開かれる音が聞こえた。
「うふふ」
彼女はウキウキしながら、玄関に行き彼を迎えるが‥。
「“ボス”その女は?」
彼の後ろには、柄の悪い数人の男達がいた。
とてもだらしない格好で、何人かは額に赤いバンダナを巻いている。
そして腕や首にはタトゥー。
それはまさに、ギャングを思わせる風貌である。
「俺の女だ。手ェ出すんじゃねェぞ」
「へへっ。分かりやしたよ。それにしても、良い女っすね」
「ははっ、まあな」
彼はその男達を自宅へ上がらせ、男達はソファに座ってくつろぎ始める。
「“ゲイリー”ちょっと来て」
「何だ?」
メアリーは別室へ行き、ゲイリーと二人きりで話し始める。
「あの男達は誰?」
「ははっ。俺の仲間だ」
メアリーは彼の“仲間”という言葉を聞き、只ならぬ嫌な予感がこみ上げてくる。
「仲間!? どういう意味? あの男達あなたの事ボスと呼んでいたけど一体」
それを聞き、ゲイリーは彼女から目をそらし、俯く。
そして一呼吸置き。
「今日言おうと思ってた。俺はよォ、ふっ、ギャングのボスなんだ」
メアリーは目を丸くさせ、呆然とゲイリーを見つめる。
「じゃっ、じゃあ一流企業の社員ていうのは!?」
「嘘だ。はははっ、悪かったなァ黙ってて」
(あ、ああ…私はどうしたら…)
続く