メアリーが愛していた男ゲイリー・ブリュースターの正体は、凶悪なギャング・グループ『ルブランス』のボスであった。
『ルブランス』は、メアリーが住む街『ロゼッタ』最大の勢力を誇るギャング・グループであり、とても野蛮な根っからの悪党共の集まりである。
ありとあらゆる犯罪に手を染め、街で発生する多くの事件は彼等が関与している。
警察でさえ手に負えず、彼等のおかげで街の治安はどんどん悪くなり、街の住人達は常に彼等に怯えて暮らしている…。
そして、彼等のボスが愛した男のゲイリー・ブリュースター。
メアリーはその事実を知り、彼に対する恐怖心が一気にこみ上げてきた。
ゲイリーは自身の正体を明かしてから、その人柄はガラッと変わり、段々と彼女に対して本性を表すようになった。
特に暴力癖が目立つようになり、ちょっとした事でもすぐに彼女に対して殴るや蹴るなどの暴行を働き、その度に彼女を苦しませてきた。
そして、精神的苦痛を味わわせたり、まるで彼女を奴隷のように扱ったりもした。
彼女にとって、毎日が苦痛の日々であった。
かつてゲイリーに抱いていた愛情は完全に消え去り、彼に対する憎しみだけが込み上げる。
……早くこの地獄のような日々から抜け出したい。
メアリーは毎日そう思っていた。
ゲイリーに何度も別れを切り出したが、決まって返ってくる言葉は
「俺への恩を忘れたのか?」
確かに、彼には命を救われた。
今彼女が生きているのは、彼があの時助けてくれたからなのだ。
それを仇で返す訳にはいかず、恩を大事にするメアリーは、ゲイリーから離れる事など出来なかった。
そして今まで、自由の無い地獄のような束縛をされながらこうして生きてきた。
何時しか彼女はこう思うようになった。
誰かに自分の事を知って欲しいと…。
そんな彼女の前へと現れたのがスティーブン・ロジャース。
彼との出会いは、彼女の運命を大きく変える事になる…。
続く