「よっ」
ドアを開けたらやはり思っていた通りの満面の笑みが待っていた。
「松岡君、引っ越してきたんだ」
「うん。よろしくね」
楓は小学校の頃は男子とはあまり喋らなかった。と言うより喋れなかった。いつも、緊張してしまってダメだった。
しかし、中学に入って男友達が増えたせいか自然と喋れるようになった。
「なぁ聞いてる?」
「あっごめん。なに?」
「お向かいさんになったからメアド交換しない?」
「え?いいの?じゃあ交換しよ」心臓がバクンバクンとしているのがすぐわかった。
「じゃあ赤外線ね」
アドレスを交換し終わった楓は自分の部屋に戻ろうとした時後ろから声が聞こえた。
「じゃあなー楓」
「バイバイ松岡君」
「あのさ、松岡君ってのやめてんくね?健介でいいよ」
やったと心の中で言った。
名前で呼べるなんて嬉しすぎ。顔が赤くなるのがわかった。
「じゃあね健介」
「また今度な」
バタンとドアが閉まった。
楓はずっと心臓がバクバクしていた。
つづく