ここは菅原家、なんだか歴史の教科書にでも乗ってそうな名字。
奥のキッチンから料理を運んでいるのが叔母さんの菅原涼子さん、見た目30後半って所だが実は40後半だというから詐欺だ。
涼子さんの作る料理はかなり美味しく、優輝なんかもたまに食べていく。
あと、朝早くから仕事で居ないが家主の菅原琢哉さん、結構おもしろい人なのだけどオレはちょっと苦手だったりする。
その中の異分子、それがオレ、前崎正悟。
なんて口に出したら涼子さんも琢哉さんも怒るだろうけど、実際のとこそうだから仕方がない。
自分でも分かる、オレだけがこの家で空気が違う。
雰囲気というのだろうか、まぁ、実子でもないオレが違うのは当たり前なんだが……
オレはそれを合わせようとしない、空気を読むっていうのだろうか? ハッキリ言ってそういうのは苦手だ、極論、嫌いといっても過言じゃないかもしれない。
まぁ、そんなオレがこの家に馴染めている(?)のは、叔父さんのルールのお蔭かな?
『敬語禁止』
たったそれなんだけど、オレにはそれが意外に難しかった。
優輝に話したら馬鹿にされたけど、本当にオレには難しかったんだ。
本家では敬語が私語みたいなめのだったから、私語なんて話す事がなかった。
今ではそれが異常だということが分かるようになった。