護身用です

 2009-08-01投稿
閲覧数[904] 良い投票[0] 悪い投票[0]

お盆の夜

田舎に帰省するため夜道愛車を走らせていた。

車内は、ほどよくエアコンが効いてて快適だ。

好きな音楽を聴きながら数年ぶりに帰る故郷に想いを馳せていた。

時刻は夜の8時。

緩やかなカーブを曲がり山道を走っていた。

突然

白い人影が車の前に飛び出してきた。

心臓が止まるほど驚いた。
反射的に急ブレーキを踏んで車を停めた。

茶色いボサボサ髪の女が両手を上げて車の前に立っていた。

青白く見えたのは青と白のノースリーブのせいだろうか。

髪は脂汗で顔にべったり貼りつき化粧気はなく肩紐が両肩からずり落ちていた。

スカートにサンダル履き。軽装だった。

女は、早口で「乗せて」と、まくし立てる。

興奮しているらしく彼女は饒舌だった。

話しによると

ドライブの最中男と喧嘩になり口論の末
無理矢理車から引きずり降ろされたらしい。

どうしようか迷ったが、
結局女を助手席に乗せた。
女は、安心したように笑顔になり何やら鞄の中をまさぐり始めた。

鞄の中から何かが滑り落ちた。

ゴトッと鈍い音をたてて…

キラリと銀色に光る物体が見えた。

それは無造作に新聞紙に包まれた包丁だった。

青ざめた私は車を再び停めた。

彼女は何がおかしいのか黄色い声を上げて笑い出した。

「世の中物騒だからこれは護身用よ」

「そんなもの、いつも持ち歩いているんですか?」

「男と会う時だけよ。さっきも、これチラつかせただけなのに、あいつビビって可笑しかったわ」

それはビビるだろう。

女は言った。

「メールだけで男はいくらでも釣れる。便利な世の中よね」

女は今後も出会い系サイトの男と会うのだろう。

包丁を鞄に忍ばせて…



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 凛 」さんの小説

もっと見る

ホラーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ